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『ICHI』 どんどん敵が倒れていくのでスッキリしました!
取材・文:内田涼 写真:田中紀子
日本を代表する時代劇のダークヒーロー、盲目の逆手居合い斬りの達人、座頭市。あの勝新太郎が演じ世代を越えた人気を獲得したのはもちろん、北野武が監督と主演を務めた映画『座頭市』も国内外で大きな話題を集めた。そして2008年、今度は何と綾瀬はるかが演じる女性版・座頭市が登場する。『ピンポン』『ベクシル 2077 日本鎖国』で知られる曽利文彦監督の新たな挑戦に体当たりで臨んだヒロイン、綾瀬が撮影中の苦労話や作品のテーマを語ってくれた。
■観ていてスッキリできる本格的な殺陣シーン
Q:殺陣(たて)のシーンも多くこなした綾瀬さんですが、トレーニングは大変だったのでは?
殺陣のシーンを撮影する半年くらい前に、曽利監督と殺陣師さんにお会いして「まず、どのくらいできるのか」っていう部分を見ていただいて、その場で素振りや基礎的なことを教えていただきました。それからしばらく別の映画の撮影が地方であったので、宿泊先のホテルで自主トレをしました。でもホテルの部屋は広くないので、殺陣の通りに体を動かしたり、刀を振り回したりすることはできませんでした(笑)。
Q:映画の中で綾瀬さんが披露する殺陣のシーンは大きな見どころですね。
10人斬りをするシーンは個人的にもとても気に入っています。どんどん敵が倒れていくので、わたし自身、観ていてスッキリしましたね。
Q:撮影中、ケガなどはありませんでしたか?
撮影が始まったばかりで慣れていないころ、指がパクって割れるケガがありました。それにはだしでワラジを履いていたので、足にビリって傷が入ったこともありました。ワラジにはなかなか慣れなかったですね。
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| ■苦労の末に誕生した女版座頭市
Q:また、瞽女(ごぜ:三味線を弾く盲目の旅芸人)として、ご自身で三味線の演奏も披露していますね。
三味線の方が練習は大変でした。あまり練習する時間がなくて、撮影が始まってからも休憩時間などに、先生に練習を見ていただいて。結構いっぱいいっぱいでしたね(笑)。
Q:衣装も印象的ですね。着心地はいかがでしたか?
これが意外と良かったんですよ。市は一人で旅を続けていて、お金もないんでボロを着ているんですが、いい具合のクタクタ感が出るように撮影中も「汚してもいいから」っていう感じでしたね。きれいな着物だと、着付けやカツラなど気になってしまう点が多いんですが、今回はそういうこともなくて、本当に楽でした。
Q:盲目の女性を演じる上で意識したことはありますか?
目を動かせないという点ですね。それと相手に名前を呼ばれたときに、どう振り向くか。そういった動作にも気を遣いました。撮影前には盲学校に行き、実際につえのつき方なども教えていただきました。
Q:いつも市の目としてそばに寄り添う小太郎くん(島綾佑)はかわいかったですね!
そうですね、実際に小太郎くんのシーンが多かったので、楽しかったです。本当にすごくかわいらしかったし、癒されました。
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■『ICHI』は一種のラブストーリー
Q:共演した大沢たかおさんはどんな方でしたか?
淡々としていておだやかで、とっても暖かくて思いやりのある方ですね。本当に十馬役にぴったりな方だと思います。
Q:市と十馬の間には愛情にも似た結びつきがありました。あの二人の関係性をどう思いますか?
十馬もつらい過去を背負っていて、だからこそ前向きに生きようとしている。そんな十馬が同じようにつらい過去を持つ市と出会って、心から助けたいと思ったんでしょうね。市も十馬に出会って、最初は十馬のおせっかいがしつこいと思っていたけど、だんだん十馬の存在に対し、恋心みたいなものを抱くようになったと思います。だから『ICHI』はアクション映画であるだけでなく、一種のラブストーリーだと思います。
Q:曽利監督からは、市という女性像についてどのような指示がありましたか?
市は普段、心を閉ざしていて、感情も表に出さない女性なんです。それだけに十馬に対して感情をわっと吐き出し「わたしには境目が見えない」と気持ちをぶつけるシーンでは、そのメリハリを表現してほしいとおっしゃっていました。それはすごく印象に残っている言葉ですね。
Q:最後に公開を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。
孤独を抱えた市という女性が、十馬という男性に出会って生きがいを探していく。そんなラブストーリーに仕上がっています。殺陣のシーンも観ていてスッキリできると思うので、ぜひ劇場でご覧になってください。
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| 今年に入りすでに『僕の彼女はサイボーグ』『ザ・マジックアワー』『ハッピーフライト』(11月公開)、そしてこの『ICHI』と4本もの出演映画が公開される綾瀬。その愛らしい表情に秘められた、天性の女優魂と演技にかける情熱でさまざまなキャラクターを演じ切るその姿に、ファンはもちろん多くの監督たちが注目せずにはいられないようだ。本作でも殺陣や三味線、そして繊細(せんさい)な役作りと全身全霊で女性剣士に成り切った彼女のこれからに注目したい。
スタイリスト:西真由美
ヘアメイク:フジワラ ミホコ
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