小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅(ドランクドラゴン)、香川照之 『キサラギ』 僕らは仲良しなんてもんじゃない、戦友です!
取材・文:小林陽子 写真:秋山泰彦
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自殺したアイドルの“如月ミキ”の一周忌に、5人のアイドルオタクが集まり、自殺の真相を探るワンシチュエーション映画『キサラギ』。5人のオタクにふんしたのは、小栗旬、ユースケ・サンタマリア、小出恵介、塚地武雅(ドランクドラゴン)、香川照之。それぞれの個性がぶつかり合い、爆笑必須のコメディー作品に仕上がった。この作品を通して大の仲良しになったという5人に、笑いが絶えなかったという撮影現場の様子や、5人で演じることの楽しさについて話を聞いた。
■僕らは戦友! 互いを尊敬し合う関係
Q:完成品をご覧になっていかがでしたか?
香川:じゃ、塚地くんから行きましょ!
塚地:そうですね。僕が正しいことを言いましょう!(全員笑)この映画は、レベルが高いんですよ。サスペンスの要素も高いんですけど、コメディーのレベルが結構高いんですね。僕は芸人ですので、笑えるか笑えないかのチェックは非常に厳しいんですけど、これはめちゃめちゃ笑えましたね(笑)。かなりクオリティーが高いので、コアなお笑い好きの人にでも笑える内容になっていると思います。
ユースケ:その通りです。塚地君の言うとおり! 正解だよ(笑)。
全員:(うなずく)
Q:皆さん、とても仲が良いそうですね?
ユースケ:皆さんがイメージしている仲良しという生半可なものではなくて、なんていうんでしょうね……、修羅場を戦い抜いた戦友って感じなんですよ。だから仕事人としても戦友としても尊敬しているし、そこまでの域に達していますよね。
塚地:戦友! 戦友!
香川:そうだね~。
小栗&小出:うんうん。
ユースケ:なかなかここまで思えるってことないですから……。
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| ■テンションの上げ下げも一丸となって
Q:撮影現場は戦場のようにつらかったのですか?
ユースケ:撮影自体がワンシチュエーションじゃないですか。だから夏の暑い中、四六時中ずっと同じセットに閉じこもりっぱなしなわけですよ。今考えると……とてもつらかったですけど、とても楽しかったですね。
塚地:一部屋の中にずっといたし、セリフの量もめちゃめちゃ多かったしね。
Q:ずっと同じ場所で撮影していると、テンションの維持が大変ですよね?
ユースケ:もちろん大変でしたけど、テンションが下がっちゃったら「下がっちゃったね」って言って、それはそれで良しとして(全員笑)、そしたら、監督やスタッフ総出でワッと盛り上げていましたね。
塚地:「下がっちゃったね……」ってオイ!(笑)。
小栗&小出:あはは(笑)。
ユースケ:総出で一緒にテンション上げるんですけど、それでも下がっちゃったら「ま、いっか!」とか言ってさ(笑)。
塚地、小栗、小出、香川:(大爆笑)
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■3週間笑いっぱなしの現場
Q:本当に楽しそうですね。小出さんはずっとニコニコしていますが。
小出:あ、そうですね(笑)。今回のキャスティングがとても素晴らしかったのでいるだけで楽しくなってしまうというか……バランスの良い絶妙な人たちが集まっていて……あれ? なんだっけ(笑)。
ユースケ:おーい! なんだっけって何だよ(大爆笑)。
塚地:おれのこと見るなよ(笑)。
香川:なんだっけって、おかしいだろ!
小出:僕が言いたいのは、ほとんど休みがなくて大変な思いをしたんですけど、余裕がない中、スタッフとキャストが一丸となって撮影に取り組めたことが良かったのかなって思います。僕にとって、この現場はとても勉強になりました。
Q:小栗さんもずっと笑っていますが、皆さんと一緒だと楽しいですか?
小栗:楽しいです!
Q:撮影では何が楽しかったですか?
小栗:楽しかったことですか……。う~ん……。
ユースケ:これだけね、彼が悩んじゃうくらい楽しかったんですよ(笑)。
Q:誰が笑わせてしまうんですか?
ユースケ:全員が面白いんですよ(笑)。何かを見ては笑っちゃうんです。撮影中も夜中の2時、3時になると段々、横隔膜が弱ってきて面白くなってきちゃうんですよ! つまらないことでも、笑い出したら止まらなくなる状態が3週間も続いたんです(笑)。
香川:何でか分からないんですけど、なんか面白いんですよね(笑)。例えばね、今、僕たちの前にIC(テープレコーダー)が3つ設置されているでしょ? これ、一つだけテープでほかの2つはデジタルとか、何で真ん中のだけボディーがでかいんだね? って、それだけでおかしいんですよ(一同笑)。僕が役柄で身に付けている苺のカチューシャだって、最初はおかしかったんですよ。カチューシャを付ける“イチゴ娘”って衝撃的じゃないですか。でも、それ以上に笑えることがたくさんあり過ぎて、カチューシャでは笑えなくなってきたんですよ(笑)。あの姿以上に笑いがあるってすごいでしょ? 要するに、脚本がよく考えられているってことですよ!
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| ■血を吐く思いで挑んだ撮影
Q:ワンシチュエーション映画で長ゼリフの映画って大変ですよね。
ユースケ:普通はこういうタイプの劇って、持たないと思うんですよ。セリフも長いし、ワンシチュエーションだし……。
小栗:よく頑張りましたよね。
ユースケ:脚本が面白いって言ってもらったのも、僕らも血を吐く思いをして仕事していましたからね。オシッコもまっ茶色ですよ(笑)。っていうのはうそですけどね(笑)。まぁ、それくらいみんなで頑張ったと言いたかったんですよ。本当に、皆さんのお陰って感じですね。
Q:劇中でみなさんが集まるきっかけとなったネットへの書き込みとか、実際にもご覧になったことは?
塚地:パソコンあると何でも調べられますしね、趣味とか、自分の好きなものを共有できる仲間を見つけられるので「すごい!」って思います。
香川:ほんとは思ってへんやろ~(笑)。
Q:劇中のアイドルをこよなく愛したように、皆さんにも熱中できるものってありますか?
ユースケ:僕は仕事以外に熱中できるものってあまりないんですけど、僕らが演じた5人っていうのは、ある意味うらやましいなって思いますよね。一つのものに生涯をかけてもいいと思っているということが……。ここまで熱中できるものってそうそうないじゃないですか。(ここで、小栗旬がユースケの髪に付いたゴミをとってあげる)
香川:僕はですね……(悩)。熱中できるもの……(悩)ちょっと思いつかないから、塚地君からお願いします!
塚地:僕は仮面ライダーが好きですね。最近だとサバイバルゲームをやっています。
小出:僕はゲーム機ですね。
ユースケ:なんかリアルだな~(笑)。
小栗:僕、なんだろうな~(悩む)。う~ん。女の子かな~(笑)。
ユースケ、塚地、香川:渋いな~。そうだよな、そうだよな。そりゃ野郎はみんなそうだよ(笑)。
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■再共演を熱望する仲良し5人組
Q:もしまた5人で何かをやるとしたら?
塚地:僕らってドリフターズに近いなって思ったんですよ。だから、コントとかいいですよね。バンドもいいな。
ユースケ:サラリーマンNEOみたいなのも良いよね。でも、この5人だったら何でもできると思いますよ、シリアスからコメディーから何でも。
小栗:『キサラギ』の舞台も1回だけやってみたいね!
小出:また一緒に映画に出たいですね。
ユースケ:芝居モノは良いんですけど、生放送だけは無理かもね(笑)。
香川:生はできないね~(笑)。
Q:『キサラギ』第2弾があったら?
塚地:喜んで出演します!
小栗:もちろん!
ユースケ:自分以外に4人がいるならやりますよ!
小出:あと、またみんなでご飯を食べに行きたいです。ユースケさんがおいしい店を教えてくれるんですよ。ユースケさんグルメなので。
ユースケ:そうそう、みんなでおいしいもの食べに行こうよってね。
Q:ユースケさんがごちそうされるんですか?
小栗:順番なんですよ。
ユースケ:おごったり、おごらなかったり、いろいろあるんですよ。香川さんがよくごちそうしてくれます。
香川:いやいや、順番順番! ま、一番年寄りですからね(笑)。
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劇中の衣装と同じブラックスーツで現れた5人。見るからにカッコよく迫力がある5人だが、インタビュー中は、笑いが止まらず中断するほど大爆笑が続いた。しかし、本編と同じよう会話中における“あうん”の呼吸はぴったりだった。5人で活動できたらと願う彼らが、今後どんな活動を見せてくれるのか楽しみだ。
鈴木杏&本仮屋ユイカ 『吉祥天女』 少しの危なさを持ちながらも男女の友情はあると思います!
取材・文: 平野敦子 写真:秋山泰彦
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17歳の美少女に運命を狂わされていく人々を描いた、吉田秋生の傑作コミックを映画化した『吉祥天女』。その妖艶(ようえん)なヒロインを熱演し、これまでの役のイメージとは違う“大人の女”の顔も見せてくれた鈴木杏と、ヒロインとは対照的な素直な友人役を演じた本仮屋ユイカ。今、最も注目を集める若手実力派女優2人が、切なすぎるヒロインの生き方に対する熱い思いや仕事への情熱、お互いの印象などについて語ってくれた。
■吉田先生の原作に興奮!
Q:この映画は吉田秋生さんのコミックを映画化したものですが、原作を読まれた感想を聞かせてください。
鈴木:わたしは台本を読んだ後に原作を読みました。ずいぶん前から「BANANA FISH」や「ラヴァーズ・キス」を読んでいて、その単行本の裏面の案内を見て「吉祥天女」の存在は知っていたんですが、なぜか読んだことはなくて……。お話を聞いた時は「あ、吉田先生の作品だ!」とちょっと興奮しました(笑)。
本仮屋:原作はすごくミステリアスというか、怖いという印象が強かったですね。自分がそのようなテイストの映画に出るということ自体に少し戸惑いました。でも、それと同時に、「わたしがそういう作品に出られるんだ!」という新鮮な驚きもありましたね。
Q:ご自分が“小夜子”の役を演じると思われましたか?
鈴木:最初に“小夜子”という役にちゃんと触れたのは台本だったんですが、まったく自分が演じるということが想像できなかったですね。役が決まったとき、「これはどうしたものか」と思って……(苦笑)。
Q:本人を目の前にして話しにくいと思うのですが、お互いの印象を聞かせてもらえますか?
鈴木:面白い人だなと思いました。わたしが今まで出会ったことがないタイプで、わたしにとってとても刺激的な人です。自分にないものをたくさん持っているし、仕事に対するスタンスとか、突っ走ってる感とか、仕事を大好きだと思っているところとか、似ているところもあるんです。でも、お互いの“色”が違うという感じがして、そういうところがとても面白いです。彼女は白とか水色とか……、黄色も入っているし……。優しい色だと思います。
本仮屋:わたしが「女優になろう」と思ったとき、すでに杏ちゃんはテレビに出て活躍をしていました。自分と同い年の小さな女の子が一生懸命仕事をしたり、進学したりしている姿にあこがれを抱いていたんです。実際に会って、とてもプロフェッショナルな人だなと感じました。また、何でも伸び伸びと軽々こなしているように見えて、実はとてもがんばり屋で、自分に対してすごく厳しい人なんじゃないかと思います。
Q:先ほど本仮屋さんは優しい色とおっしゃいましたが、鈴木さんご自身は何色だと思われますか?
鈴木:赤は好きなんですが、優柔不断だから多分赤じゃないですね。自分では“白”か“透明”でいたいなって思うんですが。居心地のいい色になっていればいいかなと思います(笑)。
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| ■同性を魅了する鈴木の色気
Q:魔性の女“小夜子”とご自身との共通点はありますか?
鈴木:まったく!
本仮屋:はいはーい! あります! 杏ちゃんと小夜子の似ているところは“色っぽい”ところ!
鈴木:え~っ、またまた~(笑)。
本仮屋:なかなか女の人が女の人に色気を感じるのは難しいと思うんですよ。たとえば大先輩の30歳とか40歳の方に対しては色気というのは感じやすいと思うんですが、杏ちゃんには異性だけではなく、同性もぞくっとさせる独特の色気があるんです。
鈴木:え~っ!
本仮屋:最初は杏ちゃんが小夜子という役を演じているから、そういう色っぽさが出ているのかなと思っていたんです。でも、この間杏ちゃんの誕生日会に行ったら、まだそれは健在で(笑)。人を引き寄せる色気というのは、鈴木杏と小夜子の共通点なんだと思いました。
鈴木:いやぁ~、自分に色気があるなんてみじんも思っていないので……。だから、小夜子ちゃんの話が来たときに、妖艶(ようえん)でミステリアスで色気もあって、人を翻弄(ほんろう)して……というような人と自分は「どうしよう、まったくかけ離れている!」って思いました。そこがこの役を演じるにあたって、一番の不安要素だったんです……。
本仮屋:わたしは杏ちゃんの色気にドキドキしていました(笑)。
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■男女間の友情について
Q:この映画の中では男女の友情というものは存在しなかったのですが、実際には男女の友情は存在すると思いますか?
鈴木:少しの危なさを持ちながらもあると思います。ただ、どこでどうなるかというのは誰にも分からないですよね。共演した勝地涼君とはお互いが小学生や中学生のころからの仲で、それこそ何回も共演して、何度も恋人役で共演しているのに、やはり友だち同士という感覚で、心を許せて恋愛話でも何でもできてしまうような相手なんです。
本仮屋:男女の友情はあって欲しい! きっとあるんじゃないかなと思います。わたしにはまだそこまで固いきずなで通じ合える人がいないので、これからが楽しみですね。
Q:最後にこの映画をご覧になる方へのメッセージをお願いします。
鈴木:話が複雑で、ちょっと暗い雰囲気もあるんですが、小夜子ちゃんもこう見えて思春期を生きている子なんです。小夜子ちゃん、由似子ちゃん、涼君という思春期の3人の中でさわやかなものができていればいいなと思ってがんばりました。ぜひ観てください!
本仮屋:すべてのキャラクターがとても魅力的で、小夜子と由似子という2人の女の友情が軸になっています。小夜子の悲しさやつらさというものもあるんですが、高校生が持つすがすがしさとか、いわゆる“青春”というものも感じられる作品になっているので、ぜひ劇場に観に来てください!
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| 普段はあまり話すのが得意ではないという本仮屋ユイカも、大先輩の鈴木杏と一緒だとすっかりリラックスした様子で、2人は仲の良い姉妹のようだった。しっかり者の鈴木杏とおっとりとした本仮屋ユイカは、確かに鈴木が言うように一見“色”が違うように見える。だが、その根底にある純粋さや優しさというものは共通しているように見えた。これから先、この2人が、どのような色に自分を染めていくのか楽しみだ。
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竹内結子 『サイドカーに犬』 どんどん捨てていって、
もう何もなくなっちゃったところから入りました
取材・文:シネマトゥデイ 写真:福岡周一
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約1年半、スクリーンから遠ざかっていた竹内結子が戻ってきた。彼女の久しぶりの主演作は、『雪に願うこと』の根岸吉太郎監督作品『サイドカーに犬』。この作品の中で、タバコを吸い、豪快に笑い、自由奔放に生きる“ヨーコ”を演じた竹内は、以前よりも自由に、そして魅力にあふれた女優として、さらなる輝きを見せている。1年半ぶりの映画で、驚きの変身を遂げた竹内に話を聞いた。
■久しぶりの主演作で演じたのはかっこいい女性
Q:久しぶりの主演作に“ヨーコ”という役柄を選んだ理由は何ですか?
台本をいただいたとき、いつもは自分の役寄りに読むんですけど、今回は主人公の女の子である“薫ちゃん”の方に感情移入してしまったんです。薫の目線からヨーコを見ていて、この人はわけが分からないなあ……どういう人なんだろうって思ったんですが、小さいときにこういう人にいて欲しかったという思いもあって、ヨーコという人物に興味がわきました。
Q:竹内さんからご覧になって、“ヨーコ”のカッコいいところはどこだと思いますか。
ヨーコのカッコいいところ……。多分、「じゃあねバイバイ」ってお別れするシチュエーションで、一度背中を向けたら絶対振り返らないところだと思いますね。ちょっとかわいらしい女の子だと、何度も振り返って手を振る人っているじゃないですか。そういうことはないタイプの人かな。「じゃあ!」って言ったらもうそれまで、みたいな(笑)。その潔さが心地良い人だなあと思いますね。
Q:これまでは“ヨーコ”とは正反対な役が多かったと思うんですが、今回の役作りはどの様にされたんですか?
今まで持っていたものは、どんどん捨てていって、逆にもう何もなくなっちゃった、っていうところから入りました。今までは本当に、誰か愛する人がいるとか、やりたいことがあるとか、自分が演じる軸みたいなものがあったんです。そこを、自分にとっての大事なポイントにしていたんですが、今回はどこに住んでいるのか、本当は何歳なのか、何をしている人なのかっていうのがまったく分からない。なら、自分では考えることはやめてしまおうと思ったんです。
Q:“ヨーコ”の役柄から学んだことは?
自由に生きてみたい人から見れば、ヨーコみたいな人って、すごくうらやましいと思うんです。でも、逆に常に物事を慎重に考えている人っていうのも、ヨーコから見たらうらやましいんじゃないでしょうか。そういう意味では、どういったタイプの女性でも、結局ないものねだりになっちゃうのかなあ……。でも彼女を演じて、自分の人生を考えたりすると「女で良かったかもなあ、わたし」って思いました。女性っていろんな意味で自分のあり方を選べるんじゃないかなと思って。どんな変化でもついて行けるっていう、たくましさがある気がするんです。
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| ■早く大人になりたかった少女時代
Q:小学生の“薫”から見た“ヨーコ”像が、とても魅力的に描かれていました。
わたしが薫だったら、あんな風に「どっちにする?」ってお菓子を選ばせてくれる人って、「なんてすてき!」って思うんですよね。幼いころは食べ過ぎちゃいけないから、今日の分はこれだけって決まった分だけ与えられるってことが多いんで、自分が何かを選んでいいって言われたときのうれしい気持ちは、よく分かりました。
Q:竹内さんはどんなお子さんでしたか?
小さいころは、早く大人になりたいと思っていました。自分で何かできるっていうのが、うらやましくてしょうがなかったんですよね。おさがりじゃない洋服を着たり、常に新品を選べたりっていうのが、働いている人の特権っていう感じがしました。わたしは学校を卒業して自分で生活するようになって、なんて楽しいんだろう! って思いました。
Q:女性に頭突きをしてしまうヨーコでしたが、あのシーンはどうやって撮影されたのですか?
あの日は、現場に行って監督と話をしていたら、「ヨーコはケンカができる人だと思うけど、めちゃくちゃケンカが強いってわけじゃないと思うんだよ」っていう話を監督からうかがいました。アクションの指導をしてくださる殺陣(たて)師の方もいらしたので、こういう風に追い詰められたら、こう返すしかないよねってシチュエーションを設定して演じました。
Q:女性同士の取っ組み合いはいかがでしたか?
なんか面倒くさいですよね……。まあ、まずは落ち着いて話を聞けよ、みたいな気持ちが自分にはあったんですけど、でも、ゴングが鳴ってしまったらしょうがない、みたいな(笑)。もう勝つか負けるかしかないんだな、と思いました(笑)。
Q:この作品をどういう風に楽しんでもらいたいですか?
時代の設定が80年代なので、当時を知る人たちには、懐かしいシーンがいろいろなところにあると思います。それからヨーコみたいな人がそばにいたら、自分はどうだったかな? と想像したり、自分の子ども時代を振り返ってみたりするのも楽しいんじゃないかな。映画館を出た後で、ヨーコと誠さんの関係や、あの後どうなったかなど想像してみるのも面白いかもしれません。
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今まで演じた役柄からは想像がつかない、自由奔放なヨーコを演じ、演技の幅を広げた竹内結子。「この役を演じて、“女で良かったな”と思えました」ときっぱりと言い切ってしまう彼女は、“凛とした”という言葉がとても似合う女性だった。タバコも吸う、けんかも強い、と竹内結子自身とは、かけ離れた“ヨーコ”かも知れないが、女もほれてしまうほどのかっこ良さを“竹内結子”という女優の中にも感じたインタビューだった。
松山ケンイチ 『ドルフィンブルー ~フジもういちど宙(そら)へ~』 幸せを幸せだと分かる人にしか、幸せは来ない
取材・文:南樹里 写真:鈴木徹
今、乗りに乗っている若手実力派俳優の筆頭といえば、松山ケンイチだろう。主演最新作は、世界初「イルカの人工尾びれプロジェクト」を実現させたという実話に基づいた『ドルフィンブルー ~フジもういちど宙(そら)へ~』。同作では、人口尾びれを発案し、奔走(ほんそう)する新米獣医師にふんする。舞台は沖縄美(ちゅ)ら海水族館。青森出身の松山ケンイチが初めて訪れた沖縄の地で、まるまる1か月滞在し撮影した自信作について話を聞いた。
■獣医を演じるにあたって
Q:ロードバイクを疾走させるシーンがすてきでした。
特に大変なことはなかったです(笑)。楽しく乗っていたら、ロードバイクはすぐに乗りこなせるようになりました。
Q:特技は棒高跳びだそうですが、運動神経は良いですか?
僕、泳げないんです。青森では学校の授業で水泳がないんです。スキーの授業はありましたが、すっごくうまい! っていうわけではないです。普通です(笑)。
Q:獣医役をとても自然に演じていましたが、役作りはどのようにされたのですか?
僕的には、一也のモデルとなった植田さんを表現したかったんです。でも、前田監督から一也は新米で生意気って設定。オリジナルの一也を演じてって言われたんです。なので、こだわった演技もしていません。ある日常を切り取ったドキュメンタリー風の作品で、観客をあまり泣かそうとはしていないんです。監督もそのまま自然な感じを出したいっておっしゃっていました。
Q:前任の獣医たちが耐えられずに辞職する中で、一也はどうして飼育や掃除を耐えられたのだと思いますか?
中村課長役の利重さんに言われた「イルカのことをどれだけ分かってる?」ってことですね。一也は獣医として何が必要なのかをどこかで分かっていたと思うんですよ。自分が早く何かを成し遂げたい、証明したい、っていう思いがあるから、すごくあせっている。だけどそうじゃないってことも知っていて、だからこそ我慢できたんだと思います。普通に僕らも分かってはいるけれど、認めなかったり、知らないふりをしたりすることがたくさんあると思うんです。
Q:モデルとなった植田さんと話すことで、「分からない部分が分かった」とおっしゃっていたようですが、具体的にはどんなことですか?
獣医師であることについて、全部です。普通なら準備のために作品と作品の間をとるようにしているんですけど。今回は事前に役作りをできなかったんです。獣医のこともまったく勉強していかなかったので、採血や、体温の測定、どこまで触れていいとか、すべて教えてもらいました。
Q:アイデアの提案や、撮影中のアドリブはされたのですか?
監督とは本当によく話し合いました。池内博之さんが演じられた比嘉剛と一也の関係って険悪なんですけど、台本ではあそこまで激しくは描かれてはいなかったんです。実際、現場でかかわっているうちに、ああなったんです。お互いが、人と同じぐらいの命の重さが動物にあることを知っているし、助けたいという思いがあってこそですから。
Q:“反骨心”をにじませる演技は、さじ加減が難しいのでは?
それは監督と相談しながら考えました。抑えきれない部分は普通に出ちゃっていますし、それは編集でなんとかしてもらっています(笑)。今回は自分の感じたままに演じていたことが多いです。
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| ■イルカとの触れ合いを通じて学んだこと
Q:初めて行かれた沖縄で、一番の思い出といえば? またお酒や食事はどうでしたか?
飼育員の方の家で飲み会をしたことです。それもあって泡盛は飲めるようになりました。おいしかったです。お酒に関しては、飲んでもそんなに変わりません。食べ物で言えば、沖縄美(ちゅ)ら海水族館のパイン味のアイスがおいしかったので、おすすめです。
Q:動物が苦手とのことですが、イルカとの共演はいかがでしたか?
イルカたちと接して、動物に対する距離感が変わりました。僕は動物に対して、触れたいという興味がなかったんです。一緒にプールに入るシーンでは、最初の方は、タイミングが合わないこともありました。でも、イルカがスーッと寄ってきてくれたときは「通じ合えた!」と思えました。飼育員の方のサインに従って、望み通り演技を見せてくれました。イルカのフジは母のような存在で、この現場で一番大切でした。
Q:(イルカの)フジは、泳ぎをあきらめたときに、人間からの救いの手が差し伸べられたわけですよね。
フジの場合も本当にフジがどう思っているのか、それが本当に良かったのかって今でも分からないところだと思うんです。でも、間違いなく、そういう尾びれをなくしてしまうイルカはフジだけじゃない。人間がそれを知って何かをできるようにするために、こういうプロジェクトができあがったんです。僕らが水族館で普段見ることのできない魚を見られることで、こんなにもたくさん命が世界にいて、自分たちが自然界を汚すことによって、これだけの魚たちが死んでしまうってことがよく分かる。たぶん水族館の意味ってそういうことだと思うんです。
Q:この作品に関わったことで、動物に対する思いは変わりましたか?
水族館とかって、ただ、自分たちが楽しむために魚を囲っているだけじゃないかと言われてしまうのは仕方がないと思います。ただ、館長のセリフにもありますが、人間の自己満足で終わらせちゃいけないと思うんです。"絶対に必要な悪いこと"なのかな、って考えさせられました。
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■俳優として、一人の人間として
Q:表現者として大切にしていることは?
自分が表現者として成り立っているかは分からないのですが、間違いなく、自分が今この世界に生きていることが、表現する力になるし、役になりきる力になる。そういう意味で、ちゃんと今の世界を生きるっていうことに対する責任を持ちたいです。
Q:松山ケンイチ個人として、自分に対して課しているルールはありますか?
自分ができることは、知らないふりをしないでやろう! ってことですね。たとえば……マイ箸(はし)を持ち歩くとか、ペーパータオルは使わないとか。電気はこまめに消す。そういう簡単にできることは、ちゃんとやろうと思っています。
Q:「今ある状況を変えるのは自分自身でしかない」との発言を以前されていました。現状には満足されていますか?
はい、充実しています。いい人間関係で、スタッフにも恵まれ、作品にも恵まれ、大満足しています。今の自分の考え方がいいからだとも思っています。
Q:自分に自信を持つのは、とてもいいことですね。
自分に自信を持つって大事ですよね。自分のことを好きにならなくちゃダメだと思うんです。自分を好きにならないといけませんよね。幸せを幸せだと分かっている人間にしか、幸せは来ないですからね。
Q:今後“松山ケンイチ”はどうなるのでしょうか?
いただいたお仕事にきっちり向き合っていきたいです。
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「インタビューぐらいでしか自分のことを話す機会がないから」という松山ケンイチ。こちらの質問に対して言葉を選びながら真摯(しんし)に答えてくれる姿は好感度大。22歳という若さながら、自分の考えを持ち、妙なブレをまったく見せないのは、芯(しん)がしっかりしているからだろう。人気上昇にともなってモテモテ状態では? と聞いてみたが、「全然です」と即答だった。それでも世間は思っていますよと伝えると、「それは心外です」とまじめに答えるシャイな面こそ、女性のハートをくすぐるに違いない。今後、ますますの活躍を期待し、応援し続けたい。
上戸彩 『ピアノの森』 少年っぽい女の子は好きだし、あこがれです
取材・文:内田涼 写真:田中紀子
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長編アニメーション『ピアノの森』は、売り上げ累計350万部を突破した同名コミックの映画化。ピアニストを目指す小学5年生“一ノ瀬海(カイ)”の成長と友情をドラマチックに描いた同作は、映画ファンだけでなく、原作の読者や音楽愛好家からも熱い注目を浴びている。そんな話題作で、主人公の声を演じるのが、歌に演技にと幅広い活躍で知られる人気女優、上戸彩。初めての男の子役に挑んだ、アフレコでの様子や作品の見どころ、さらに今、夢中になっていることについて話を聞いた。
■海(カイ)くんみたいな性格にあこがれる
Q:脚本を読んだ感想を教えてください。
すごくすてきなストーリーだと思いました。ピアノを嫌いになりそうな少年と、心からピアノを愛し、楽しんでいる少年が出会って、友情を深めていく。そんなストーリーが、色や映像、音といったものがすべてマッチした形で映像化されていたことに感動しました。
Q:上戸さんから見て、主人公の海君はどんな少年ですか?
すごく勝ち気で、元気で、ヤンチャ。それに素直でまっすぐですね。それと、親友の雨宮くんに自分の寂しい気持ちを伝えるシーンは、普段とのギャップもあって、ジーンとしちゃいました。お母さんのことを、名前で“怜ちゃん”って呼ぶところも好きですね。
Q:そんな海君と上戸さん自身を比べてみると、いかがですか?
自分の感情を人にぶつけることができないタイプなので、海君のようなストレートで「当たって砕けろ」的な男の子は、うらやましいと思います。
Q:海君のルックスって、少しだけ、上戸さんに似ていると思ったのですが。
うれしいですね、少年っぽい女の子は好きだし、あこがれなので。
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| ■声変わりした神木君にドキッ
Q:男の子の声を演じることに対して、難しさや抵抗はありましたか?
今回のお話をいただいたとき、最初に「ありのままの声でいいんですよ」ということだったので、あまり抵抗はありませんでした。小学5年生の役で、まだ声変わりもしていない設定だったので。でも、実際にアフレコをしてみると、意識したわけじゃないんですが、自分の太い声が出ていましたね。海君の顔を見ながらしゃべったので、自然と、普段とは違う新しい声になったんだと思います。
Q:アフレコするにあたって、どんな準備をしたのですか?
今まで何度かアフレコのお仕事をさせていただいているんですが、毎回、反省点ばかりが残って、悔しい思いをしていたんです。今回は、そんな悔いが残らないように、映像や台本を何度も何度もチェックしました。それと、自宅やドラマの楽屋などでいろいろ勉強したので、本番では、さらっと海(カイ)君になることができたと思います。大変だったということもあまりなく、楽しんでアフレコすることができました。
Q:親友役を演じる神木隆之介君とは久しぶりの共演ですね。
今回のアフレコは、リュウ(神木君のこと)が先に録音していて、わたしはヘッドホンを通して声を聞きました。声変わりしていたので、なんか、ドキっとしましたね。でも、実際に会ってみると、今も変わらず、わたしのことを“桃”(ドラマで共演したときの役名)と呼んでくれるので、すごくうれしかったです。
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■パワーの源は、自家製の野菜ジュース?
Q:上戸さんは、小学5年生のとき、どんな女の子だったんですか?
おてんばでしたね。ずっと、外で遊んでいました。ケガをしても懲りずに、男の子と一緒に、校庭でサッカーやドッジボールをしていました。そのころの夢ですか? 子どもが大好きだったので、保育士さんを目指していました。
Q:海君は、ピアノを弾くことに夢中ですが、上戸さん自身が今、夢中になっていることは何ですか?
夏に全国ツアーを控えているので、体力をつけなくちゃと思って、朝からジムに通っています。正直、ハードですけど「今やらなくて、いつやる」って感じでがんばっていますね。もっと甘いものが食べたいなと思うこともありますけど(笑)。最近は、自分で野菜ジュースも作ってます。牛乳やハチミツも入れているので、結構カロリーは高いと思いますが……。
Q:最後に、これから映画をご覧になる方にメッセージをお願いします。
わたし自身、小さいころ夏休みに家族と観に行った映画はとても印象が強くて今も覚えています。この作品も、皆さんの記憶に残るようなすごくすてきな作品だと思います。それと、今、クラシック音楽がすごく流行っているので、この作品を通して、クラシック音楽の素晴らしさにも触れてほしいですね。ぜひ、この夏休みに観ていただきたいなと思っています。
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デビュー直後から、常に「テレビで観ない日はない」というほど売れっ子の彼女だが、その人気の秘密は、やはり、仕事に対する真っすぐな姿勢だと改めて感じさせられた。今回のアフレコも、コアなファンを持つ原作の映画化とあって、相当なプレッシャーがあったはずだが、それに押し潰されるのではなく、自分自身のパワーにしてしまう天性の才能によって、“一ノ瀬海”という少年像にイキイキとした生命力を与えている。一方、「最近は、家族と過ごす時間も増えてうれしい」と語る姿は、ごく普通の21歳の女性に見える。そんなバランス感覚も、幅広い世代から支持される理由ではないだろうか。 |