勝地涼 『幸福な食卓』 男の人は女の人に転がされているほうがいいと思う
取材・文:鴇田崇 写真:シネマトゥデイ
女性を中心に幅広い読者層から圧倒的な支持を受けている、気鋭の作家・瀬尾まいこの「幸福な食卓」が映画化された。ある事件をきっかけに崩壊の道をたどった家族の再生への道のりを描く本作で、『亡国のイージス』で強烈な存在感を見せた勝地涼が、これまでの硬派なイメージとは一転して、さわやかでポジティブ志向の若者を好演。作品についての感想やテーマなどさまざまな話を聞いた。
■普通に一観客として観ていて泣いた
Q:『幸福な食卓』の原作あるいは脚本を読まれた感想はいかがでしたか?
『幸福な食卓』の内容はかなり繊細だったので、『幸福な食卓』っていう題名のわりには、出だしは「あれ?」っていう感じでしたね(笑)。でも、読み終わったあとに温かい気分になりました。
Q:そのとき、勝地さんが演じられた大浦勉学(おおうらべんがく)という役は決まっていたのですか?
はい。自分が演じた大浦勉学は明るいし前向きで、(北乃)きいちゃんが演じた佐和子も前向きで周りの人を明るくする女の子だったので、観ているお客さんに「大浦勉学って本当にいいやつだね、憎めないやつだね」って思ってもらえないと、何も響かないだろうと思いました。
Q:佐和子役の北乃きいさんとの初共演の感想はいかがでしたか?
彼女にとっては初めての映画で、すごく緊張しているって言ってたんですけど、本当に堂々としていて、すごいと思いました。演技でもセリフに佐和子の思いを込めて演じてくれたので、佐和子と勉学でいる関係がだんだん気持ちよくなって、楽しくなっていきましたね。僕は緊張すると自分のセリフでいっぱいいっぱいになったりするんですけど、(きいちゃんは)「何なんだこの余裕は?」というぐらい落ち着いていました。
Q:物語の中心となる中原家と離れて、勝地さんはほとんど別撮りだったわけですが、完成版をご覧になった感想は?
自分が出ていないシーンは、とても楽しみにしていました。物語は家族の再生だったりするので、普通に一観客として観て泣いちゃいましたね(笑)。やっぱり家族っていいなぁと。
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| ■大浦勉学は純粋にいいやつ
Q:『亡国のイージス』『この胸いっぱいの愛を』など硬派な役が続いていましたが、今回はちょっと違いますね。
そうですね。女の子との恋愛するような物語は本当に少なくて、どちらかというと戦争ドラマとか心に何かを抱えているキャラクターや虐待されるというような役が多かったので、今回のようなヒロインが悩んで、それを包み込む役は新鮮でした。大変でしたけど、楽しかったですね。「佐和子にこう思われるためにはどういう演技をしないといけないんだろう?」とかいろいろ考えながら演じました。たとえば、彼女のセリフに「大浦くんっていいよね」っていうのがあるんですけど、どうしたら本当にそう思ってもらえるのかなぁと考えていました。
Q:佐和子の家族である中原家にはそれぞれ悩みがありますが、大浦勉学にはどんな悩みがあると思いますか?
「勉学には悩みはない」と思って演じていました。勉学は常に前向きだし、そもそも悩みを悩みとも思ってないというか、「おれんち、家族が崩壊しているんだ」とか言いながらね(笑)。とにかく、何事にも前向きなキャラクターですね。
Q:大浦勉学は10代なのにとても大人っぽいですよね。恋愛も含めて、何でも分かっているような感じですね。
ある意味純粋で、ある意味大人びているんですよね。でも、それを一生懸命考えているからこそ、彼がほほ笑ましくなるっていうか、彼のやることひとつひとつに“彼だから”って納得してもらえるというか(笑)。映画を観ていただければ、彼の人柄がしだいに分かっていくと思います。ああ、なるほどねって(笑)。
Q:同性からみて、勝地さんは大浦勉学という男にどんな魅力を感じましたか?
まぁ、若いからこそ、あそこまでとことんできるんでしょうけど、逆に今はそういう人が少なくなっているかもしれないですね。打算的だったり、こう思われたら嫌だなって思いながら言葉を選んでいたりとか、こういう風に思ってもらいたいなとか、ちょっと裏を考えてしまうような恋愛の仕方だったり、人との関係だったりが多そうじゃないですか。大浦勉学はその反対の位置にいるような人間なので、ああ、いいなって純粋に思えました。
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■男の人は女の人に転がされているほうがいい
Q:勝地さんは男として、どういう生き方がカッコいいと思いますか?
どうですかねー(笑)。いろいろと気を使って生きるのも大変だと思うし、逆に自分の考えとか頑固すぎてもいけないと思います。これだっていうものに真っ直ぐ突っ走って行けたほうがいいのかもしれません。それを女の人が「はいはい」って見守ってくれるような。男の人が偉そうにしているわけでもなく、女の人も支えているだけというわけでもない感じがいいですね。男の人は女の人に転がされているほうがいいと思います。その意味では自分が演じた大浦勉学もすごく純粋だし頑固でもなく、佐和子と勉学の関係はまさに自分の思っている“カッコいい生き方”でしたね。
Q:勝地さんにとって俳優のお仕事は突っ走って行ける対象ですか?
このままやっていくべきなのか、やっていく上でどうすればいいのか、いろいろ悩んだ時期もありました。20歳は人生っていうか男としてもこれからだし、自分の持っている力を全力で出そうと思って突っ走って行けますもんね。
Q:演じるにあたって、勝地さんはどのように役を掘り下げていますか?
台本を読んで役の気持ちを考えたり、自分なりにイメージを膨らませたりしますね。自分にいろいろな人生経験があれば、もっと幅が増えるのかもしれません。だからベテランの俳優さんはどんなこと考えながら台本を読んでいるのか、聞いてみたいですね。
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| ■何となく時間を共有できる関係性こそ最高
Q:俳優というお仕事をやられていて、どんな役が演じていて一番楽しいと感じますか?
そうですね……。どの役も演じていて楽しいんですけど、大浦勉学みたいに悩んでいる人のそばにいる人っていうのも楽しかったですし、ほかの作品で悩んでいる人の役も楽しかったです。でも、普通の男の子の役が一番難しかったですね。これからもいろいろな役をやりたいです。自分からかけ離れた役は楽しいでしょうね。たとえば、殺人犯とか(笑)。日常では味わえないストーカー役とか(笑)。
Q:今回の『幸福な食卓』で勝地さんが演じられた大浦勉学のどんなところを観て欲しいですか?
愛すべきキャラ、愛されるキャラ、憎めないやつって思ってもらいたかったので、それを感じていただけたらと思います。テーマは“家族の再生”なので、佐和子に大切なことを気付かせてあげたりとか……自分ひとりじゃなく、キャストやスタッフの皆さんと一緒に作った映画なので、全体を観て欲しいですね(笑)。
Q:最後に、勝地さんにとっての“幸福な食卓”とは、どんな状態を指すのでしょうか?
自分が小学生のころは家族と一緒にご飯を食べたりする時間がありましたけど、だんだんそういうのがなくなってきたと思います。みんな忙しいし。だから、たまに会えるその時間だけでも、大切にしたいですね。それだけじゃなく、「元気?」の一言だったり、メールでもいいし、家族を思う気持ちを忘れずにいたいです。「食卓でメシを一緒に食べる」っていう形式的なことだけでなくて、何となく時間を共有できる関係が最高だと思うんです。それは家族だけなく、友達関係でも。『幸福な食卓』では、そのあたりも感じていただければうれしいです。
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数々の超大作や話題作で共演者を食うほどの存在感をアピールしてきた勝地涼。インタビュー現場に現われた彼は映画で観る勝地涼そのものの魅力を放っていた。それは仕事に対するストレートな姿勢からきていると改めて感じた。しっかりした考え方、話し方で作品のこと、仕事のこと、自分のことを語る彼を見ていると、今後間違いなく日本映画界を背負う俳優に成長するだろうと確信した取材だった。
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山田花子 『無花果の顔』 理想のタイプの男性は年上で、
なんでも決めてくれる人がいいです
取材・文・写真:シネマトゥデイ
老若男女問わずたくさんの人から愛されている、お笑い芸人の山田花子が、桃井かおりの初監督作品『無花果の顔』のヒロインに抜てきされた。『嫌われ松子の一生』にも囚人役で登場するなど、かねてから女優としての仕事に興味を持っていた山田は本作でついに初めての主演を務めた。不倫した男との間にできた子どもを出産するという難しい役どころを、抑えた演技で見事に演じきった、女優・山田花子に、作品について、そして女優としてのこれからを語ってもらった。
| ■脚本を渡されても実感がない
Q:『無花果の顔』に出演しようと思ったきっかけを教えてください。
前から、映画とかドラマに出たくて……この作品の話をマネージャーさんが見つけてきてくれたので、オーディションを受けることにしました。最初は、「合格」と言われても、脚本をもらっても、全然実感がわきませんでした。
Q:脚本を読んだ感想は?
初めて読んだときは、正直、どういう映画かよく分からなかったです。撮影が進むにつれてだんだん、自分も理解していきました。
Q:出来上がった映画をご覧になって、スクリーンの中のご自身はいかがでした?
映像がすごくキレイで……。キレイな映像の中の自分は、すごくキレイでした(笑)。
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■新喜劇は失敗しても笑いになるけど……
Q:初めての主役としての演技はいかがでしたか?
うまくできました。赤ちゃんを産む役だったのですが、普段は赤ちゃんと接する機会があまりないので、赤ちゃんをずっと抱っこしているのはすごく大変でした。
Q:吉本新喜劇でもお芝居をされていますが、新喜劇と映画の芝居ではどんな違いがありましたか?
新喜劇の舞台は、失敗しても笑いになるからいいんですが、映画は失敗すると怒られるから……(笑)。うまく演技ができなくて、怒られました。現場でも、なんか浮いてるなあって感じることが結構ありましたね。
Q:新喜劇で怒られたりすることはないんですか?
突っ込まれるくらいで、全然厳しくないです。でも最近は、先輩の石田靖さんとかに「花子、あんまりボケへんようになったわ」って言われます。「女優のやりすぎや」って(笑)。でも月に2回は大阪で、新喜劇に出ていたので、気分転換ができました。
Q:大阪に帰るとほっとしますか?
東京のほうが好きです(笑)。芸人さんも東京の芸人さんのほうが優しいし(笑)。
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■桃井監督がピリピリしていても気にしない
Q:女優としても大先輩の桃井監督からは、どんなことをアドバイスをされました?
歩き方とか……セリフが標準語だったので、話し方とかをアドバイスしてもらいました。たまになまったりしちゃっていたので(笑)。脚本に、「トマトもいいわね」というセリフがあったんですが、「トマト」の言い方が「違う」って言われたんですけど、どこが違うのか分からなくて困りました(笑)。
Q:桃井監督がイライラしたときはどうしてるんですか?
あまり気にしませんでした(笑)。
Q:逆に監督に言われてうれしかったことはありましたか?
映画のためにちょっとやせたんですけど、「きれいになったね」って言ってもらえたときがすごくうれしかったです。
Q:どんなダイエットをされたんですか?
お酒を飲まないようにしました(笑)。
| ■妻夫木くんがいいです
Q:作品では、父親との関係がとても温かかったですが、お父さんとの思い出はありますか?
昔よく女子プロレスに連れて行ってもらっていました。
Q:お父様は、女子プロファンなんですか!?
違います(笑)。もともとお兄ちゃんがプロレス好きだった影響で、女子プロファンになったんです。それで、わたしが見に行く女子プロの試合についてきてくれていました。
Q:お父さん役の石倉三郎さんとは仲良くなれましたか?
すごく優しい人です。恋の話をしました。「おすすめの俳優さんを教えてください」って頼んだのですが、「俳優はやめたほうがいい」って言われました(笑)。
Q:山田さんの好きな俳優さん……いつか共演したい方っていらっしゃいますか?
妻夫木くん……。
Q:今田耕司さんのファンとうかがっていたのですが……。
妻夫木くんがいいです。俳優さんがいいです。
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■女優・山田花子として……
Q:尊敬している女優さんはいますか?
わたしは、市原悦子さんがすごく好きなので、いつか「家政婦は見た」の家政婦役をしたいです。
Q:日本映画で、出てみたかった映画や役柄はありましたか?
『THE 有頂天ホテル』に出たかったです。松たか子さんの役じゃなくて、ワンシーンおいしい役が欲しいですね。
Q:芸人として大活躍されているなか、女優業も本格的に始められたわけですが、女優業と芸人だったら、どちらが楽しいですか?
どちらも違った楽しさがあるので、半々でやっていきたいと思います。いつもはお笑い系なのに、女優は、いつもと違う自分になれるのがすごく楽しいです。
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■演技派女優になりたいです!
Q:いろいろな顔を持っている山田さんですが、本当の山田さんってどんな女の子なんでしょうか?
普段はおしゃべりがすごく苦手で、あまり話しません。でも、お笑いをしているときは、すごく楽しいです。
Q:最近、夢中になっていることはありますか?
トランペット……。吹けたら、モテるかなあと思って。
Q:どうですか? モテだしましたか?
まだまだかかりそうです……(笑)。
Q:山田さんの理想のタイプってどんな方なんでしょうか?
年上で、なんでも決めてくれる男の人がいいですね。わたしは、(自分で)なにも決められないので……。
Q:本作での山田花子は、女優として何点でしたか?
百点満点です。
Q:女優・山田花子としての、これからの抱負をお願いします。
演技派の女優になれるようにがんばります。
テレビで「なんじゃー! ボケー!」と男のお笑い芸人に立ち向かっていく山田花子の素顔は、とにかくシャイで内気な女性だった。テレビで見せているお笑い芸人としての一面、そして映画で見せている女優としての一面、インタビューで見せた内気な一面。彼女のなかには、いろいろな“山田花子”が住んでいるようだった。そして、彼女自身、お笑い、映画などさまざまなジャンルで違った自分になることを、心から楽しんでいるように思えた。桃井かおり監督に、「違う種類の部族と会った感じだった」と言われたものの、控えめながら内に秘めた強さを持つ主人公を個性的な演技で熱演した山田は、間違いなく女優としての大きなステップを登ったはずだ。女優としての山田花子にこれからも、期待していきたい。
乙葉 『劇場版 どうぶつの森』 家にいるのが好きで
仕事がなければずっと家にいます
取材・文:平野敦子 写真:亀岡周一
グラビアアイドルからキャリアをスタートし、歌手に女優に声優にとマルチに才能を発揮する乙葉。その癒し系のキャラクターが人気で、現在も東京電力や花王など、CMにも出演するなどその活躍は目覚ましい。そんな彼女が人気のゲームを映画化した『劇場版 どうぶつの森』に“ぺりこ”の声で特別出演した。彼女が演じたキャラクターへの熱い思いや、心温まるこの映画の魅力について語ってもらった。
■声優はあこがれの職業
Q:この映画をご覧になっての感想を聞かせてください。
わたしは自然が豊かな長野で生まれたので、この『どうぶつの森』の世界のように自然を体験して育ちました。なので、幼少時代を思い出して、すごく懐かしい気分になりました。
Q:ペリカンのぺりこちゃん役ということですが、最初に声優の仕事の依頼を受けたときの感想を聞かせてください。
これまでにも何度か声優のお仕事をさせていただいているのですが、わたしにとって声優の仕事というのはあこがれの職業のひとつなので、とてもうれしかったです。
Q:今後も声優のお仕事をやっていきたいということでしょうか?
今は東京電力の“でんこちゃん”の声をやっているのですが、わたし自身そういうかわいいキャラクターが大好きなんです。声優としてまた違う自分になれるような気がするので、もっともっといろいろなキャラクターになってみたいですね。
Q:特にお気に入りのキャラクターはありますか?
ディズニーのキャラクターものなどたくさん集めているのですが、ほかにも猫のキャラクターものなどもありますし、けっこう動物もののキャラクターが好きですね。
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| ■ぺりこちゃんは親しみやすいキャラクター
Q:『劇場版 どうぶつの森』の映画の中でお気に入りのキャラクターはいますか?
やはり自分が演じたぺりこちゃんがすごくかわいらしくて(笑)。ぺりこちゃんはゲームの場合、すぐに登場するキャラクターなので親しみがわくと思います。
Q:ぺりこちゃんと乙葉さんの共通点はありますか?
ぺりこちゃんはとてもしっかり者なんですよ。そういうところはわたしとは似ていないかもしれないですね(笑)。逆にぺりこちゃんのお姉さんのぺりみがとても自分勝手なキャラクターなので、性格の違うぺりこちゃんとぺりみのコンビネーションがすごく面白いと思います。あとはパフスリーブ(ふくらんだ袖)が好きなところ! ぺりこちゃんはいつもかわいらしいパフスリーブのお洋服を着ているんです。今日はちょっと違うのですが(と自分の着ているワンピースをチェック)、わたしもパフスリーブが大好きで、お洋服もたくさん持っているので、ぺりこちゃんの衣装がうらやましかったです。
Q:楽しんでお仕事をされたようですが、苦労した点があったら教えてください。
普通の人間の声と違って動物の口に合わせて話すのが大変でした。ぺりこちゃんの場合はくちばしが大きいので、画面を見ていてもしゃべっているのかしゃべっていないのかよく分からないんですね。それを一生懸命見ながら声を吹き替えていく作業がちょっと大変でした。でもとても楽しくお仕事させていただきました。
Q:お気に入りのシーンはどこですか?
身だしなみを気にするぺりこちゃんが、常に洋服のリボンを直すしぐさがかわいかったです。彼女はとてもおシャレさんで、とても女の子らしいんだと感じました。
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■仕事のおかげで外出できる!?
Q:声優、歌手、女優といろいろなお仕事をされていますが、どれが一番大変ですか?
そうですね……(と真剣に考える様子で)、わたしは毎日いろいろ違うことをするのが好きなので、なかなかひとつのジャンルにしぼれないんです。一日一日違うことを考えられるというのがすごく楽しいので、大変だなと思うことはそんなにないです。
Q:家にずっといるということはあまりないのでしょうか?
ずっと家にいるのは苦痛ではないので、仕事がなければずっと家にいます(笑)。仕事をやっているおかげで外に出られるのかもしれませんね。
Q:ご自分も『どうぶつの森』に住んでみたいと思われますか?
ほのぼのした雰囲気の、イヤなことが何もない平和な世界に生きてみたいとはと思いますね。普段の生活で自分はそんなに危機を感じることはないのですが、今の日本もそうですし、世界も決して安全とは言えないので、やはり、ほのぼのと癒される世界のほうがいいな……と思います。
Q:では、最後にこの映画のアピールをお願いします。
たくさんの動物たちと自分が実際に触れ合っているような感覚になって、心身ともに癒される映画だと思うので、ぜひ家族全員で劇場に観にいらしてください!
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| 外見も声もしぐさもとても女性らしくて愛くるしい乙葉。癒し系ののんびりとした人を想像していたのだが、今回その期待はいい方に裏切られた。確かにほんわりとした雰囲気の彼女は、周りにいる人を和ませてくれるが、その一方で、頭の回転も速く、とても勘のいい人なのだと感心させられた。自分の仕事にしっかりとしたプロ意識を持って臨んでいる姿勢も伝わってきて、声優としても、女優としても、歌手としても、もっともっと彼女のことを見ていたいと思わせる魅力が、彼女には備わっているのだろう。
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妻夫木聡&柴咲コウ 『どろろ』 共演者が想像以上だったとき、
新たに生れる感情や表現に幸せを感じる
文・取材:シネマトゥデイ 写真:亀岡周一
動画 [ 再生(1Mbps) | ご利用ガイド ]
手塚治虫原作の「どろろ」は、作品誕生から約40年もの間「映像化は不可能」と言われ続けていた。しかし、ついに総製作費20億円を投じて映画化に成功した超大作『どろろ』が公開される。体の48か所を魔物に奪われた“百鬼丸”に妻夫木聡。百鬼丸を明るく元気づけながら、奪われた体を取り返す旅をする泥棒“どろろ”役に柴咲コウ。日本映画界をリードする若手俳優二人が、パワフルで迫力満点のアクションを見せている本作は、最高のエンターテインメント作品に仕上がった。主演の妻夫木と柴咲に、ニュージーランドロケやそれぞれの映画への思いを語ってもらった。
■手塚治虫の「どろろ」を読んだ感想
Q:原作を読んだ感想と映画化が決定したときの感想をお願いします。
妻夫木:最初に台本をもらって読んだら、すごく面白くて、そこで手塚(治虫)さんの原作だと聞きました。(台本を読んだのは)漫画を読む前だったので、「脚色してこうなっているのかな」と思ったんです。でもそうではなく、手塚さんの「どろろ」という作品自体がアクションも含めて、人間の生きることや、内面のことが描かれていて、映画としても漫画としてもすごく面白かったです。
柴咲:漫画なのに漫画の枠に収まらず、現実世界のことのようにリアルに伝わってくるところや、考えさせられることがちりばめられていて、勉強になると感じました。映画のお話をいただいてから原作と脚本を読んだのですが、(脚本は)漫画を実写にする威力のある書き方で、たくさんト書きもあったし、動きの説明がいっぱいありました。脚本も1冊の本として小説のように読めたので、これは面白くなると思いました。
Q:たくさんの魔物が出てきますが、お二人でどんどん倒していって、一番倒しがいのあった魔物はいましたか?
妻夫木:倒しがいですか?(笑) 結構どの魔物も強かったですからね。
柴咲:やっぱり動いているものの方が……。大木や静止しているものよりも、動いているものの方が動きはつかみやすかったですね。
妻夫木:そうですね。やっぱり“カラス天狗”ですかね。“カラス天狗”とのシーンは、特にワイヤーアクションが多かったんです。(柴咲)コウちゃんも、そのときワイヤーやっていたし。(撮影の)入りが“カラス天狗”のシーンだったので、印象深いですね。
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| ■ワイヤーアクションに挑戦!
Q:アクション監督が中国のチン・シウトン監督でしたね。向こうのアクション監督は「容赦ない」とよく聞きますが、いかがでしたか。
妻夫木:容赦ないということでもなかったですね(笑)。
柴咲:優しかったですよね。
妻夫木:そうですね。でも、最初に僕が(撮影に)参加したときに、「あー、これからアクションか……」って思って行ったんです。そしたら、「それじゃあ、妻夫木さんお願いします!」と言われて、ワイヤーを付けたんですけど、その前にスタントの方が吊られていて、パッと上に飛んだんですよ。「あー、これは、僕じゃないだろうな」と思っていたら、「じゃ、妻夫木さんあれと同じことやりますので」って言われたんですよ! そういう意味では容赦はなかったですね(笑)。
柴咲:わたしも“カラス天狗”との対決シーンのときに、初めてチン・シウトン監督の下でアクション撮影が始まったんです。「ワイヤーアクションはないから」って言われていたんですけど、いきなりワイヤーを付けられて、「アレ? 何で付けるのかな?」って思ったら、「じゃ、そのエアーズ(岩石)から飛んでください」って言われて飛びました。しょっぱなから(笑)。
Q:怖くなかったですか? 大丈夫でしたか?
柴咲:それが、命綱があるとすごく勇気が出るんですよ。高い所に立ちなさいと言われても、1本(ワイヤーで)吊られているだけで、何か妙に強くなったような感じがして、あまり恐怖感はなかったです。
Q:ニュージーランドのロケはいかがでしたか?
妻夫木:日本と明らかに違う大地なんで……っていうか日本の広大な大地に行ったことないから、よく分からないのですが(笑)……。植物だったり、土だったり、全体的な雰囲気が見たことのない空気感だったので、そういう異質な感じが『どろろ』の世界観とすごくマッチしていたと思います。ニュージーランドに助けられている部分もあるんじゃないかな。
柴咲:行ってみたらすごくだだっ広い土地があって、しかも草が青々としていないところだったんです。だから荒れ果てた雰囲気も出ていたし、映像としてはバッチリの場所でした。
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■“百鬼丸”と“どろろ”
Q:“百鬼丸”と“どろろ”はすごく個性的な二人ですが、現場でお互いがどういう演技で来るかというのは想像されていましたか?
妻夫木:いろいろ想像していましたね。脚本が映像をイメージできるくらい本当に面白いんですよ。だから「“どろろ”はこういう感じだろうな」と想像していました。コウちゃんの“どろろ”はその想像通りでもあったし、それ以上に“どろろ”の魅力がかわいくもあり、面白くもあり、そして力強くもあるっていうところを見せてくれたんじゃないかな。
Q:柴咲さんは現場で、“どろろ”として“百鬼丸”と接していかがでしたか?
柴咲:うーん、話の流れで、いつからこの二人が信頼関係を築いたのか分からないけど、「縁」みたいなものを感じるフレーズがあったように思いました。撮影は順撮りではないので、あまり考えずに「言葉では言い表せない空気」みたいなもので二人が引き合わされたというならそれでいいのかなって思いながら演じました。“百鬼丸”って悲しみだったり、人に対する愛みたいなものを忘れないで持っているようなキャラクターだから、そこに“どろろ”は共感、共鳴したのかな。
Q:映画の中で“百鬼丸”が魔物を倒したのに、「怪物!」と言われて石を投げられるつらいシーンがありますよね。そういう役柄を演じて、いかがでしたか?
妻夫木:まあ、いい気はしないですね。でも、そこから逃げていては何も始まらないんじゃないかな。そこに立ち向かう、自分から行動することがとても大事で、そのちょっとした勇気、はじめの一歩が出れば、あとは頑張れるんじゃないかと思うんです。だから、“どろろ”の存在が“百鬼丸”にとっては支えであって、助けであったのだと思います。
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| ■俳優としてのお互いの印象
Q:最後に、撮影を終えて演技者・役者としてのお互いの印象を教えてください。
妻夫木:「オレンジデイズ」のドラマで共演して以来なんですけど、本番にかける(柴咲さんの)集中力の高さは素晴らしいなとびっくりさせられました。自分が想像している以上のものと言うか、想像しているものだけがすべてじゃないと僕は常々思っていて、(共演者に)それ以上のものをやられたときに自分から新たに生れる感情や表現が自分自身の幸せを感じるときなんです。そういう刺激が多くて、一緒に演じていて楽しかったです。
柴咲:毎回与えられる役があって、その役の中で打ち出さなきゃいけない責任があるというところばかりを気にしてしまうことってあると思うんですね。(妻夫木さんとは)掛け合いのときに、それらを全部取っ払って、相手から刺激を受けつつ「こっちももっと!」っていうようなやり取りができました。それは“どろろ”と“百鬼丸”の押さえ切れない感情として映し出されていたので、本当に一番(妻夫木さんに)助けられたところだと思います。
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インタビューの間、妻夫木、柴咲からひしひしと伝わってきたものがあった。それはお互いが“演技”そして“映画”にかける情熱の深さだ。“百鬼丸”としての妻夫木、そして“どろろ”としての柴咲は、相手の見せる演技に敏感に反応しながら、柴咲の言葉通り「こっちももっと演じてやろう!」という気持ちでぶつかり合っていたのではないだろうか。二人の火花を散らすような演技は、観ているこちらまで刺激されてしまうほど面白い。真摯(しんし)な態度で映画に取り組んでいる二人の役者からは、“百鬼丸”と“どろろ”に似たような信頼にあふれた友情が垣間見えた。
豊川悦司&寺島しのぶ
『愛の流刑地』
服を着ている時の方が恥ずかしかった
取材・文:シネマトゥデイ 写真:秋山泰彦
2004年から約2年に渡って日本経済新聞に掲載され、大反響を呼んだベストセラー「愛の流刑地」。究極の愛を描いた本作を豊川悦司、そして寺島しのぶという最高のキャスティングで映画化した『愛の流刑地』が1月13日より公開される。二人の強烈なベッドシーンが早くも話題だが、お互いの信頼関係のもとに作り上げられていったというラブシーンの撮影時のことなど “愛ルケ”と呼ばれる話題の本作の主演、豊川悦司と寺島しのぶに話を聞いた。
■難役への挑戦
Q:大変難しい役柄でしたが、出演の決め手になった一番の理由を聞かせてください。
豊川:ご一緒させていただくのが素晴らしい監督、そして寺島しのぶさんだったからですね。鶴橋監督とは初めて会ったんですけど、以前からすごく興味があって一緒にやりたいと思っていました。それが一番の理由ですね。
寺島:わたしは、鶴橋監督が書かれた脚本を読ませていただいて、読み終わったらすぐやらせていただきたいと思いました。そして、相手が豊川さんと聞いていたので「これだったらもう何の心配もいらない」と思って引き受けました。
Q:『やわらかい生活』での“いとこ同士”の関係から、今回まったく違った関係になりましたが、役柄にはすぐに入れましたか?
豊川:『やわらかい生活』でも寺島さんと一緒でしたが、今回は設定もキャラクターも全然違うので、役に対してはゼロからスッと入っていけましたね。
寺島:あのとき、豊川さんストパーでしたね(笑)。
豊川:ストパーって?……あぁ、ストレートパーマ(笑)。そうそう、そうでした。
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| ■4回目の共演
Q:お互いの信頼がないとできない役だったと思いますが、信頼関係は撮影前からできていましたか?
豊川:そうですね。寺島さんとの共演は4回目になるんですけど、今回は絡みのシーンがすごく多いし、ハードルが高いシーンがたくさんあったから、お互いぶっちゃけていかないと作品の仕上がりに、ものすごく関係しちゃうんじゃないかと思いました。彼女だったからできたというところはいっぱいあります。
寺島:同感ですね(笑)。豊川さんとの共演は本当に心地いいです(笑)。
Q:映画を観ていると本当に恋人同士では? と錯覚してしまうこともありましたが、濃厚なラブシーンを何度も重ねるうちに、「好き」になってしまうことはありませんでしたか?
豊川:それはありますね、でも、今付き合ってないですよ(笑)。
寺島:本当に恋人同士だったら嫌だったねって、言ってたんですよね。
豊川:そうだね。夫婦で共演する人もいるけど、僕はそういう経験がないから分からない。僕自身を、菊治って役にある程度持ち込んでいかないと「ちょっとしんどいな」っていうシーンもあったので、今回はただ、役になりきるだけではなく、自分を菊治にかぶせてしまうことがありました。ラブシーンの中では、菊治と冬香なんだけど、結構“豊川”っていう人間が出ているところがあると思います。
寺島:わたしもそうですよ。ひとつでも嫌なところがあったらできなかったと思います。あとは豊川さんが全部、体でカバーしてくださって、周りに体があまり見えないように背中からシーツをかぶせてくださり、いろいろなケアをしてくださったので、すごいなって思いました。でも、本当に好き合っているように見えるってことは、褒め言葉だと思いますね。
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■“冬香”の生き方
Q:冬香という女性の生き方について、どう思われますか?
豊川:難しいなぁ……。冬香という女性に100%感情移入できるかどうかっていったら……すごく謎が多い女性だから難しい。ただ、寺島さんが演じた冬香というキャラクターを、自分が実際現場で体験して、「ああ、女の人ってすごいな」と、改めて尊敬し直しました。
寺島:わたしは結構幸せだったと思います。女性としてのやることを全部やっちゃったんじゃないかなと思うし、結婚生活だって決して悪いものではなかったですしね。原作では前の旦那さんがすごく暴力的だったらしいですけど、映画ではそういうこともないし。ただ、菊治とのセックスは今まで味わったことがないもので、"女"としてまた目覚めてしまった……っていう。結局、最後を考えると「んー」って思っちゃいますけど……。でも、女性の人生をまっとうしたし、女性としての幅の広さというか、やりたいことやり尽くしたってくらい疾走したと思います。全力投球で! だからわたしは冬香を演じて、何の疑問も感じなかったですね。菊治との出会いが進むにつれて、冬香がだんだんとつやつやになってきた気がしました。
豊川:つやつやになってきたんですか(笑)。でも撮影は順撮りじゃなかったんですよ。どんどん、さかのぼっていった感じかな。撮影も出会いのシーンまで服を着ていなかった時間の方が多かったから、服を着ている時間の方が恥ずかしかったかも(笑)。ちょっと語弊があるかな。服を着て見つめ合うシーンの方がすごくドキドキしましたね。
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| ■男と女の関係は無限!
Q:ウキウキしながらメールを打っているシーンなど、菊治が恋をしている様子がとてもかわいらしかったですね。あれは、ご自身とダブる部分がありますか?
豊川:あれは、おれじゃないですよ! 菊治です(笑)。何を言わせる気ですか(笑)。台本に書いてあったんで……。でも楽しいじゃないですか、恋愛が始まったばかりのときって。そういう経験は僕にもあるし、そういうころはウキウキしますよね。だから菊治をかわいらしい男に見えるように演じました。というのも、はたから見ていて「あぁ、いいな」って思えないと、後半に向かって救いようがなくなっていくので、せめて最初のほうだけはもっともっと菊治を励ましてあげたいなと思ったんです。
Q:ベッドシーンが話題を呼んでいる本作ですが、官能シーン以外でどんな部分を楽しんで欲しいと思いますか?
豊川:確かにね。物語には殺人や不倫という「モラル的にどうなんだ」みたいなものがあるんだけど、この映画を観て、単純に恋をしていない人は「恋をしたいな」って思ってくれればいいし、今誰かに恋をしている人は「すぐ会いたいな」でもいいし、一緒に住んでる夫婦だったら「今日は旦那さんの頭をシャンプーしてあげようかな」とか(笑)。そういう、幸せな気分になってもらえればいいなと思いますね。
寺島:いきなり「死ねますか」って言われたら引きますけどね(笑)。
豊川:引きますね(笑)。本当に堅苦しくなく恋愛映画として観て欲しいし、人を愛する気持ちを味わってもらいたいです。
寺島:これを多くの人に観てもらって、男性の価値観や女性の価値観について語り合ってもらいたいですね。年齢や恋愛の経験値はみんな違うわけだから、男と女の関係は無限なんじゃないですかね。だからこの映画を観て恋について語り合ってもらいたいです。
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映画の中で、息が詰まるほどの官能的な愛を演じていた豊川と寺島は、こちらが圧倒されてしまうほど明るく、サバサバと質問に答えてくれた。「本当に好き合ってるのかと思った……」というインタビュアーの言葉に「ほんと~!? うれしいね!」と二人で笑い合う姿からは、まるで戦いを終えた“戦友”のような固い絆(きずな)を感じた。撮影中は、裸でいる時間の方が多かったという寺島しのぶ。まさに体当たりの演技を見せた彼女の男らしいほどの女優魂と、豊川悦司の芯(しん)の通った役者魂が見事にぶつかり合った“愛のかたち”を、ぜひその目で確かめてもらいたい。
[ 本帖最后由 narcissusly 于 2008-4-4 14:02 编辑 ] |