|
愛知県出身、北海道在住。 息子の克也とふたり、細々と馬牧場を営む。
かつて、酪農業を夢見た夫とこの地に移り住んだのは30年前。 そこから、ふたりで死に物狂いで働き、牛、やがては馬を育てるようになる。 一時はG1レースを制したダービー馬を輩出、最盛期は馬40頭もの多頭飼いをしていたが、8年前の冬、夫が不慮の事故で還らぬ人となる。 親戚縁者のない新規就農組だったため、離農を余儀なくされるかと思ったが親子ふたり、食べられるようにと仕事を世話し、食べ物を差し入れ、かわるがわる様子を見に来てくれたのは当時の町の人たち。その優しさに胸打たれ、この町に骨をうずめると決意。
地元の奥さん会の中心的存在でもあり、頼りない学生たちに厳しい言葉でハッパかける肝っ玉母さん。 だが息子の克也には甘く、わかりやすいひいきをするのはご愛嬌。 町の存続問題でも精力的に動いていた。
千葉県出身、北海道在住。
大学時代、北海道にバイクで放浪の旅に出たことがきっかけで北の大地に憧れ、北海道に移住。綿羊牧場を営むかたわら2年前、町で唯一のファーム・レストランを開店させた。そこは町の人々の憩いの場となり、みんなからは『ムネちゃん』と慕われている。いつもにこにこ、肩の力抜けた自由人な彼。学生たちに唯一優しい牧場主。だが、それは彼らを『お客様扱い』しているから。
実は彼、『この町はもっと開かれたほうがいい。観光客ももっと誘致したほうがいい』と町の合併に賛成している面を持つ。北海道は移住者に優しい町ではあるが、入植者3代目が主導権を握る現在、『都会から北海道らしさを求めてくるヤカラ』にはどこか、距離を置く側面があるのも事実。 そんな目に見えない距離をどこか感じて、それで彼も、この町とは敢えて距離を置こうとしているようでもある。敢えて変化を求めているフシもあるのだ。 そんな彼も、学生たちとの夏を通して、そんな現在の想いにある変化を感じていく。
北海道・札幌出身。
不慣れな学生たちを横目に、黙々と働く酪農ヘルパーさん(ヘルパーとは、酪農家が休みをとる際に酪農家に代わって、搾乳や飼料給与などの作業を行う臨時の雇われ人のこと)。
昔から田舎暮らしに憧れていた彼女、高校卒業後、北海道のとある町に酪農へルパー育成センターなるものがあることを知り、志願。そこで研修を2年積み、そこの紹介でこの町にヘルパーとしてやって来た28歳。 その根性すわった働きぶりが認められ、早くから『嫁に来てくれ』コールが絶えなかった彼女だが、『男に頼るのは嫌』『いつか自分の牧場を持つまでは』とひたすらお金を貯めている。国の補助を受けても、自分で牧場を持つには少なくとも2500万はかかるのだ。
朝は牛・馬・豚の牧場、農園、呼ばれればどこへでも行って働き、夜はこの町唯一の憩いの場、ファーム・レストランの手伝いもしている。 その陽気さと図太さで、いつもメンバーを笑顔にするみんなの潤滑油的存在。
北海道出身、北海道在住。
この町の期待を一心に背負う新米市議会議員。既婚。 もともとはこの町の出身で、札幌で北海道庁に勤務。地域振興課で頭角を現し、広報、知事補佐と経験を重ねた後、昨年、地元からの要請もあり市議会議員に立候補。見事、当選を果たす。この町が生んだマドンナ議員である。
『北海道を生き返らせる』という意思を持つ彼女は、親交のあった教授・寺西とのつながりを通して関東農業大学の研修をあっせん。学生たちが来ることで、町の活性化経済の発展にも繋がり、ひいては酪農業界を守ることにもなる。そんな信念を持って奔走しているが、にわかに起きているのは市町村合併の動き。 一都市集中型の体制にし、この町を再編しようという動きである。しかしそれはこの町の消滅を意味し、それだけは避けたい奈津美だが、やがて『合併を推進することこそ、この町が生き残る道』との考えに達する。 このことが後に、町民たちの大反発を招き、やがて学生たちとも対立していく。
ひとり頑なに何もかもを背負う彼女自身も、この夏、学生たちとの触れ合い、この騒動を通してその生き方を自らに問い直していくこととなる。 |
|