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天下一讲座
先日起きた、画家・牛神貞治氏の事件の真相について、皆さんはどれくらいご存知だろうか。もちろん、あれだけ世間をにぎわせた事件だから、概略くらいは耳に入っていることだろう。しかし、実際ニュースや新聞で報道されていることは、事件の一部をなぞった表面的なものに過ぎない。人は知らない。その裏に、どのような悲劇があったのかを。そして、どんなに悲しい愛の結末があったのかを…。今回は、「Who done it(フーダニット)」の基本を解説すると共に、事件の陰に隠された知られざる真相について講義していこうと思う。
そもそも、「Who done it(フーダニット)」とは、読んで字のごとく、「誰がそれを行ったのか」、つまり「犯人は誰?」というミステリーの基本中の基本、王道のストーリー展開を指す言葉だ。推理小説をあえて分類するならば、「How done it(ハウダニット)=どう犯行を行ったか」「Why done it(ホワイダニット)=なぜ犯行を犯したか」と併せて、3つにカテゴライズすることが出来る。要するに、名探偵がどこに事件解決の軸足を置くかで、物語の展開は3つに大分出来るということだ。…で、なぜわざわざ英語で言う必要があるのかって? そんなことは説明するまでもない。英語の方がカッコイイからだ! もっと言えば、僕は英語が得意だからだ! 以前、オフィシャルダイイングメッセージをODAと略したのも、今回フーダニットをWho dane itと書いたのも、周囲の人間が僕の高尚な推理を聞くに値する人間か試したに過ぎない。この程度の間違いに気づかないような連中であれば、僕の推理を聞く権利すらないのだ!
さて、フーダニットに関する解説はこれくらいにして、話を今回の事件に戻そう。被害者からある調査依頼を受けていた僕は、事件発生当時、すでに現場にいた。ゆえに警察が到着するまで、どうしようもなく暇を持てあま…いや! 鋭く推理をめぐらせていたわけだが、実はその時、僕は早くも犯人の絞り込み作業を終えていた。「あからさまに犯人っぽいヤツは、犯人じゃない」。ミステリーの揺るぎない鉄則だ。僕くらいの名探偵ともなれば、「犯人はあなただ!」とやる結末から逆算して、容疑者を絞り込むことさえ可能なのだ。僕が関係した事件という時点で、意外性に乏しい平凡な事件などありえないのだから。
そして、僕の予想通り、事件は“謎の美少女”の登場で、大きな転機を迎えることになる。名探偵としての役割と、一人の男としての気持ち。フーダニットの事件そのものより、今回はこっちの“名探偵の葛藤”こそがメインテーマだったのかも。ああっ…! それにしても、なぜ僕は、これほどまでに華麗な名探偵に生まれてきてしまったのだろう? そして、なぜこんなにも多くの女性からモテてしまうのだろう? 本人の意思とは裏腹に、次から次に女性が僕に好意を抱いてしまう。僕の魅力を罪だと言うなら、僕は名探偵でありながら、重大な犯罪者であるのかも知れない。ミステリーの神よ、罪作りな僕をお許し下さい! そして、彩っぺ! “名探偵の掟”の世界でしか生きられない、頭脳明晰、容姿端麗、神出鬼没の僕を、どうか許しておくれ! |
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